2016年3月行く
民放ドラマが古い家屋室内のロケでよく使っている鶴巻温泉の老舗旅館、元湯陣屋にいきました。
ここは、一時客足が途絶え倒産の危機にあった老舗旅館を、大企業のエンジニアだった後継ぎ息子が会社を辞め、妻を女将に据えて、アメリカのIT 顧客管理の会社Salesforceを使って経営大改革を実行、ITを駆使した顧客満足度向上マーケティングが功を奏し一転して経営がうまくいくようになったことで知られたところです。
まぁ、そんなことはともかく。
ITを駆使しているなんて、傍目からは全くわかりませんし、むしろそれでいいんだと思います。
それとは真逆に大正7年創業の歴史のある場の提供というか、それを活かした演出がなかなか凄いんです、此処は。
駐車場から入り口に向かうと大きな楠木(くすのき)が立っています。
三代目女将とジブリの宮崎駿監督がいとこ同士で、監督が幼少期の思い出にあったこの旅館の楠木を描いたものが「トトロの木」なんだそうです。
まずこの木から、陣屋の世界にいざなっていきます。
杖突き歩きの身からすると、この楠木から砂利道をしばらく歩き、勾配のある坂を登ってレセプションにたどり着くのはそこそこ大変でした。
宿は小山に沿う形で上へ上へと建てられてい、屋内では階段を頻繁に昇降することになるので、正直なところ身障者やお年寄りにはあまり優しい宿とは言えません。全体構造的に元々そうなのですから、やむを得ないんですけど。
レセプションでは更に歴史を感じさせてくれます。
館内あちこちにディスプレイされていますが、まずはこの古武士の甲冑。スピリッツを感じます。昔の人はからだが小さかったのだなぁと思いました。身長は160センチもいっていないでしょう。でも強かったんだろうな、と夢想。
そして刀剣。いまだに切れ味が良さそうで、ちょとドキッとしました。
元湯陣屋には明治天皇をお泊めした部屋があり、此処でこれまでに何度も将棋の名勝負が行われきたそうです。
対局を終えた名人の色紙が飾られています。将棋の好きな人は目が釘付けとなるんじゃないかな。
お部屋は和洋室でベッドにしてもらいました。
杖突きの身だと、和布団では立ち上がるのが一苦労なので、ベッドが必須です。
大浴場は入浴が難しいので、個室温泉付きです。
この木枠のお風呂は良かった。深さがないので、とても入りやすい。
湯船を背に、まずふちに腰を掛けて、湯船に向き直りつつ片足をまず湯に入れる。そして少しからだを前に傾ける感じでもう片足を入れるというパターンです。深くないので、ぐらつくことがなく、安心でした。
写真は撮り忘れましたが、お風呂からガラス越しに室内が見えるので、妻も、私が溺れないかどうか「見張り」が出来たので安心です。
夕食は部屋食でお願いしました。館内の食堂に行くのは、行きはよいよい帰りは怖いで、お酒が少し入った後に部屋へ戻るのは、足が上がりにくくなっていて、危ないんですね。なので部屋食。
とても美味でした。
それもそうですが、とにかく盛り付けが素晴らしく。器も素敵で。
料理はこうした演出、とっても大事ですよね。大満足。
そして演出は翌日の朝も。
朝食は部屋食ではなく、大広間の食堂で。
食堂になっている大広間は緑豊かな中庭を望み、開放感があってよろし。
小雨が降っていましたが、情緒がありましたね。そんな中でのお食事。
板前さんが、真横で鯵を炭火で炙ってくれる演出。美味しい匂いが漂ってき、うれしくなりました。言うことなし。
杖突での階段の昇降はネガティブ要素でしたが、この数々の演出に満足して帰路につきました。まる。
舞台裏は客のあずかり知るところではないけど、どういう顧客サービスに繋げているかという点は、YouTubeに出ていたので、ご参考までに。